自然界に見るような文様の反復と、陰影から生まれる奥行きある表情は、まるで工芸品のような佇まい。手間をかけてつくられたものだけがもつ存在感を放ちます。
ひと目見ると、革と革を編み込んだメッシュバッグのように映りますが、じつは小さなパーツを一つひとつ縫い合わせています。gentenが未来を見つめた想いと職人の技を詰め込んだ「サスティナブルカットワーク」ができ上がりました。
「サスティナブルカットワーク」は見た目の印象よりもずっと軽量です。
カットワークを型抜きした革のパーツを、一つひとつ縫い合わせてバッグの形にしているので、パーツ同士の重なりは縫い代のところだけ。そのため、ひも状の革と革を交互に編み込むメッシュバッグと比べて革の量が少なく、とても軽やか。
「副産物である革を余すことなく使い切ることはできないだろうか」。そんな想いからサスティナブルという名を冠しました。
世界が変わりゆくなか、私たちを取り巻く環境やより良い未来に向けた行動を見つめ直す時を迎えています。gentenが考えるサスティナブル。それは、限りある資源を大切に使うこと。そして、一人ひとりがお気に入りのものを、愛着をもって長く使うことです。
素材はgentenを代表するバケッタレザー、ミネルヴァボックスです。天然素材である革には、人間と同じようにキズやシミがあります。キズもシミも革の表情であり天然素材である証ですが、それらを避けて大きなパーツをとるのはとても大変なことです。
革の真ん中にキズがあれば大きなパーツを取ることはできません。では、小さなパーツではどうでしょう。キズの大小にかかわらず、創意と工夫によってキズを避け、複数枚のパーツをとることができます。
革には、キズやシミだけでなく、通称“トラ”と呼ばれるシワもあります。大きな一枚革の状態では、縞模様のように見える“トラ”も、小さなパーツにすると新しい個性となります。
とはいえ、このパーツのとり方は、とてもたくさんの手間と時間が必要になります。通常のバッグであれば、10パーツ程度で作ることができますが、このバッグは多いもので40~50パーツ要します。でも、優先すべきは効率やスピードではありません。限りある資源を大切に使うものづくりであるとgentenは考えます。
「サスティナブルカットワーク」の作り手は、タイで腕を振るう自社工場の職人たち。革を小さなパーツにカットして、一つひとつに模様の抜きを入れ、コバ(断面)を磨き、縁に焼きねん、そして縫いはじめと縫いどめを繰り返すミシンワーク。
底はものを入れたときに自然にたわみ、持った時に自然に体になじむ、とても柔らかでしなやかなつくり。
何枚ものパーツを縫い合わせる「サスティナブルカットワーク」は、ほかのバッグの3~4倍ほど手間と時間がかかります。それでもこのバッグをお届けしたくて、それぞれ限られた数ではありますが、4型のバッグをご用意することができました。でき上がったのは、サイズの異なる3つのトートバッグとショルダーバッグです。
カラーは、ヌメベージュとチャの2色。どちらも手にしたその日から革らしい風合いが楽しめるとともに、一年後、二年後と共に時を重ねる充足感が味わえるお色です。
口元はV字のカッティング。内側のポケットは、このV字に合わせて斜めに付けました。斜め掛けした時に腕の動きを妨げないので、使い勝手の良さにもご満足いただけると思います。
目にしただけではわかりにくいですが、どのバッグも写真の手が触れている4枚のパーツは、ほかのものよりも革を0.5mmほど厚い仕上りにしています。
バッグの角というのは、バッグ自身の重さを受けてどうしても“くたっ”となりやすい部分。そこで、できるだけ美しい形状を保てるよう、タイの職人のアイディアで厚みに配慮しました。
口元は、金具に頼らないミネルヴァボックスの剣差し仕様。機能性に走ることなく、バッグの雰囲気に添った手間を惜しまないつくりです。
剣のパーツを外側に出すとロゴが見え、ちょっとしたアクセントになります。
手で触れるハンドルにもひと工夫。外側部分の革をくるりと折りたたんだ仕様です。手にするとにぎり心地のやわらかさにお気づきいいただけると思います。
副産物である革をできるだけ大切に使い、確かな職人技で仕立てた「サスティナブルカットワーク」。
上質なものと長く付き合う。その発想は、より良い未来につながる一つの選択です。
天然の脂をたっぷりと含んだミネルヴァボックスのお手入れは、やわらかい布で乾拭きするだけとシンプルです。使用する布は、繊維の凹凸が少なく目の細かい綿100%がおすすめ。着古したTシャツでも構いません。乾燥してきたと感じたらクリームで保湿をしてください。
バッグには人となりが表れます。
節目節目に手を掛けることによってさらに愛着がわくことでしょう。
タンニン鞣しの革の経年による色の変化は、内に秘めたタンニンが動いている証でもあります。特にナチュラルなベージュ色であるヌメベージュの色の変化は大きなものです。次第に色が濃くなっていきますが、単純にチャに近づくというわけではありません。経年変化の過程で見られるのはオルモと呼ばれるカラーが近いかもしれません。ライトブラウンとも異なるオレンジが強いチャであり、決して染色では出せない透明感があります。こういった色の変化を実際に体感していただけると幸いです。